官 暴


 婦警が襲われている。
 勝ち誇った男の笑いが夜空に響く。

「はははは。まさか勤務中のあんたを犯せるだなんて夢にも思ってもいなかったぜ。お巡りの制服を着ているからって、あんな寂しい夜道を女が一人で歩いちゃいけねぇなぁ。わはははは」

 彼女の両手首は彼女の装備品である手錠で後ろ手に拘束されている。
 男の大きな掌が婦警の口元を覆い、彼女は声を上げられない。身体全体で抵抗を試みるが男の力は強い。

「俺の事、忘れちゃいねぇよなぁ」

 その問いかけに婦警の身が強張った。彼女は激しい抵抗をやめ、暗闇の中、自分に覆いかぶさっている男の顔を注意深く凝視した。

「そうだよ俺だよ…。あん時は随分ひどい事を言ってくれたよなぁ」

 男はそう言って婦警を見下ろしながら笑ったが、彼の意に反して彼女は首を左右に振った。しかし、それが男の怒りに油を注いでしまった。

「あぁーっ?憶えてねぇのかよ!俺の事を憶えてねぇのかよ!」

 彼は婦警のネクタイを掴んで力任せに引っ張った。

「チクショーッ!俺はなぁ、人前であんなに恥をかかされたのは生まれてはじめてだったんだよ!なのに手前ぇは忘れちまったのかよ、畜生!」

 悔しさを言葉に込めて男は叫びながら、婦警のネクタイを持って乱暴に揺すった。

「だがなぁ…手前ぇが俺を忘れてもなぁ…俺は手前ぇを絶対に忘れねぇんだよ!この糞アマがぁ」

 首を支点に激しく揺さぶられた婦警の後頭部は何度も地面に叩きつけられた。
 そして、男はネクタイを持った手を離し、婦警の制服の白いシャツのボタンとボタンの間にその手を入れると思い切り引っ張った。
 ブツブツブツと音がして胸元が肌蹴た。婦警のワイシャツの下には、さらに白いインナーのTシャツがあった。それを見た男は声を上げて笑った。

「ははははは。何だよこれ!色気のねぇ。―ん?ブラが透けるのがイヤなのかぁ?あぁ?」

 白ワイシャツを引き裂いた男の手は、婦警がインナーに着けていたTシャツの腹の部分を鷲掴みにした。

「婦人警官のブラが透けちゃぁ、恥ずかしいですかぁ?お・は・ず・か・し・い・で・す・かぁ?―でもなぁ、俺はそれ以上の恥をかかされてんだよ、あんたになぁ!」

 そう言いながら男は婦警のTシャツを捲り上げる。胸を覆った白いブラジャーが露わになった。

「ケッ!こんなモンで恥ずかしいなんて思うなよぉ…もっとなぁ、もっともっともっとだなぁ、あんたを恥ずかしい目に遭わせてやるからな!…でないと、俺の気がおさまらねぇんだよ!」

 男は片手をポケットに入れ何かを取り出した。月明りに男の手元が光った。彼の手に握られていたのは千枚通しだった。これ見よがしに婦警の眼前で左右に振られるその尖端は銀色に輝き、その向こう側に男の勝ち誇った笑顔があった。

「声…出すなよ…」

 男はそう言いながら、千枚通しの先を婦警の頬に当てた。

「わかったな。声、出すんじゃねぇぞ」

 チクリと小さな痛みが婦警の頬に走った。彼女は恐怖に大きく目を見開いて、首を縦に振って何度も繰り返し頷いた。
 既に婦警の目には涙がうっすらと浮かんでいる。
 男の手がゆっくりと彼女の口元から離れた。そして、彼は婦警に言った。

「まず、謝れ。俺に対して謝れ」

 婦警の頬を千枚通しの先がヒタヒタと叩いた。

「…す・すみませんでした。ご・ごめんなさい…許してください」

 その涙声の婦警の言葉を男は冷たい目をして聞いていた。そして、彼女に言い放った。

「馬鹿か。お前は馬鹿か」

 まず、そう言った。そしてつづけた。

「普通の社会人はなぁ、謝罪の時に、すみませんとかごめんなさいとか言わねぇんだよ!―そういう時はなぁ、申し訳ありませんでしたって言うんだよ!」

 さらに男は婦警の耳を引っ張り、強引に彼の口元に引き寄せて囁いた。

「も・う・し・わ・け・あ・り・ま・せ・ん・で・し・た…だ。言ってみろ、馬鹿」

 命じられるがままに婦警は涙混じりの声で言う。

「も…申し訳…ありませんでした」
「はぁ?聞こえねぇなぁ…。もう一回言ってくんないかなぁ」
「…申し訳、あ・ありませんでした」
「そうだよ、馬鹿女。社会人の会話を教えてやったんだ、ありがたく思えよ、こら」

 男の声を聞きながら婦警は声を押し殺して泣いた。そんな婦警に男は皮肉たっぷりの口調で追い討ちをかける。

「ありがたく思ったら返事しねぇとなぁ…常識的な社会人ならなぁ」

 そして千枚通しの先でチクと婦警の頬を刺した。

「ぅ!ぁ!ぃ痛ッ!―あっ・あ・ありがとうございます」

 男は満足気に笑った。

「ハイハイ、どういたしまして。わかりゃぁいいんだよ」

 そう言って俯いたままの婦警を見ながら、男は自分のズボンを脱ぎはじめた。

「でもなぁ、言葉だけじゃぁ通じないこともあるからなぁ…。謝罪と感謝の気持ちを態度で示してもらえると嬉しいなぁ…ん?どうだい、婦警さんよぉ…」

 ズボンを膝まで脱いだ男は、勃起したその陰茎を婦警に見せながら言った。

「ぇ!ぃゃっ…ヤダッ!」
「ヤダじゃねーんだよ!手前ぇは俺の言うこと聞くしかねぇんだよ…死にたくなけりゃぁな!」

 千枚通しが今度は婦警の眼球の前に突き出された。

「ヒッ!」

 恐怖に婦警の身体が凍った。

「いいかぁ…こないだ俺に生意気な説教たれたその口を使って詫びるんだよ…わかったか!」

 唇のすぐそばに男のペニスの先端が突き出された。

「手前ぇから咥えに来いよぉ…」

 千枚通しの先が婦警の瞼を撫でた。
 その尖端の恐怖に怯え、彼女は震えながら静かに男の陰茎を口に含んだ。

「噛むなよぉ…上手に咥えろよぉ…」
「ぅ…ぅぅぅう」

 男のペニスを無理やり咥えさせられた婦警の嗚咽を無視して男はさらに婦警に命じた。

「よしよしよし…咥えたまま、もう一度、俺に謝れ」

 そして、彼女の目尻に千枚通しの先を当てた。

「ぅ…ふぁい…むぉしぅぁけ…ぅぁりむぁすぇんですぃた」

 口いっぱいに屹立した陰茎を咥えたせいで婦警の言葉は上手く発音されない。だが、男には却ってその状況が満足そうだった。

「ょぅし…ょぉし…、かっ・感謝の言葉はどうしたぁ?」
「ぅあ…ぅぁりぐぁとぉ…ぐぉざいむぁす」
「ぅん…ぃいぞ・ぃいぞ」

 男のペニスの大きさと硬さが増したのを婦警は口の中で感じた。涙がさらに溢れてきた。だが、男は容赦がない。

「手前ぇが俺にさんざん偉そうな事を言ったその口でよぉ、今、何をやってるか言ってみろよ!ぁあ?」
「ぅぁあ…すぉ・すぉんぬぁ…ぃゃ」
「なにが、そんなだ!この馬鹿が!チンポ咥えながら上品ぶってんじゃなぇよ!このカス!」
「ぃゃ…だめ…ぃぇむぁせん」
「言えねぇじゃねぇよ!手前ぇの鼻の穴を三つに増やしてやろうか!」

 男は千枚通しの尖った先を婦警の鼻の頭に突き立てた。

「ぃゃぃゃぃゃ…」
「刺されんのがイヤなら言えっつってんだろうが!この馬鹿!その婦人警官のお上品なお口がよぉ、今、何やってるか言ってみろっつってんだよ!」
「ぃやぁ!」
「俺が手前ぇのせいで、どれだけ恥をかいたか考えてみろ、このクズがぁ!」

 男の怒りが露わになり、婦警の鼻先に当てられた千枚通しにも力が加わった。

「ぅぁ…ぃぅぃぅ…いっいぃまふ…ぃぃまふぅ」

 婦警の身体が小刻みに震えた。

「ふえへへへ…。よぉーし・よしよし…言ってみろぉ!」と、男は興奮に声を上ずらせる「手前ぇのよぉ…婦人警官様のよぉ…いつもいつもご立派なお言葉を吐いてる…そのお口がよぉ、今、どんな情けねぇ事になっているのかよぉ…言ってみろよぉ!」
「ふぉっへ…ふぉっふぇひぃてむぁふぅ」
「ぁぁあ?何を言ってんのか聞こえんなぁ…頑張れ頑張れぇ…もっと頑張れぇ…ふわははははは」

 嘲笑に耐えながら婦警は必死でペニスを頬ばったまま、涙ながらに何度も同じ言葉を繰り返す。

「ふぉっへ…ふぉっふぇひぃてむぁふぅ」

 それを聞きながら男はさらに婦警を嘲笑う。

「何だよ?ホッペって言っんのかぁ?なんだよホッペしてますぅってよぉ…頬っぺたの裏側ににチンチン当たってるってかぁ…限りなく馬鹿か、お前は!」
「ひがうひがう…ひがぃまふぅ」

 婦警は大粒の涙をこぼしながら男に訴えるように言った。

「ぁははぁーん?違うならよぉ…違うなら…俺様に、手前ぇの言いたい事が伝わるように努力しろや、カス!」

 そう言いながら男は婦警の口の中に挿し込んだ陰茎を激しく動かした。

「ほらほらほらぁ…ちゃんとハッキリ言わねぇと…このまま出しちまうぞぉ…手前ぇの口の中に出しちまうぞぉ…。この間、俺に、偉そうな事を言いやがった、手前ぇのそのご立派なお口の中になぁ!」
「ぅぁぅぁぅぁぁぁ!」

 散々に男から罵声を浴びせられた婦警は、口の中に押し入れられた男のペニスを、ポンと炭酸飲料の栓を抜くような音とともに、吐き出した。
 あまりの屈辱に婦警の身体全体が震えていた。

「ホッペじゃなくってロッテって言ってるでしょう!ロッテしてますって!わっ私にここまで言わせて、何が不満なのあなたは!」

 婦警の涙は、今や悲しみの涙というより怒りの涙だった。しかし、男は婦警の怒りを受け止めがたい様子で困惑していた。

「ろ・ロッテ?」
「そうよ、ロッテよ!今、あなた、無理矢理、私にロッテさせたじゃないの!」
「ロッテ…って…あんた、もしや、フェラチオの事…ロッテって言ってんのか」
「そんなの知らないわよ!ロッテはロッテじゃないの!…彼がそう言うんだもの…お口の恋人してって…ロッテしてって言うんだもの!」
「……」

 婦警は涙で潤んだ瞳で不思議そうに男を見た。

「あなたはロッテって言わないの…」

 男の陰茎は萎縮していた。
 彼は腰まで下ろしていたズボンをあたふたと引き上げると「畜生!憶えてやがれ」と捨て台詞を残して走り去り、夜の闇に消えた。
 その後姿には、なぜか大きな悲しみがあった。

 こうして、婦警本人は訳が全く解らぬままに、レイプの危機を脱しましたとさ。
 めでたし、めでたし。


  〜おしまい〜




2006/10/16

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