第007楽章 愛のホテル
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若宮三丁目交番から遠く離れて。そしてまた、東署管轄外でもあるラブホテルの一室。
全裸の男女が遊戯を愉しんでいる。
女性は、羽田瑞枝巡査長。だが男性は仄暗い照明のせいで誰であるかは判然としない。
男の人差し指の先が、瑞枝の胸元から、緩やかに彼女の腹部へと撫でるように移動する。
指先は臍のやや下、陰毛の近くにあるホクロの位置でピタリと止まる。
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男の指先が瑞枝のホクロ周囲を輪を描くように愛撫する。
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男 | 「ねぇ、このホクロのコト知っているのは、僕で何人目?」 |
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瑞枝 | 「男の人って、そういうのが気になるのかしら?」 |
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瑞枝は、そう言って男の顔を自分の顔に導く。
そして、小鳥のように男に軽くキスをして微笑む。
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男 | 「―え、本当?」 |
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瑞枝 | 「―ホントよ…本当にはじめてなの」 |
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男 | 「…マジで?」 |
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瑞枝は、自分をじっと見つめる男に、再び微笑んで答える。
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瑞枝 | 「うん、はじめて。―こんな気の利いた訊ね方をした人は…ね」 |
―おしまい―
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