婦人警官 屈辱 |
part 02 |
春日署々長は両腕に力を入れ三番アイアンをゆっくりと持ち上げ始めた。岬の柔らかな頬が内側からヘッドに引っ張られていく。 「…う、ぅぅぁが。」 声にならない呻き声が岬の口から漏れる。彼女の頭部は既に床を離れ、今、右肩も宙に浮こうとしている。頬の内側で感じていたヘッドの冷たい感触が痛みに変わってきた。 「ぁ!―ぁぅぁぅぁぅぁう。」 岬の右側の唇の端から唾液がゆっくりと絨毯に向かって落ち始めた。その唾液は、粘り気があるため、透明な細い糸となって空中に垂れ下がり、まだ床には達していない。 岬の上半身は宙で斜めに傾き、その姿勢は釣り上げられた魚を連想させた。 彼女は背中側で拘束された不自由な腕の右肘と、間もなく床を離れそうな腰の部分で倒れないように辛うじてバランスをとっていた。 「岬クン、その体勢は辛そうだ。少し楽な姿勢にしてあげよう。」 署長はそう言うと、突然、手首のスナップを効かせてクラブを90度回転させた。 岬は、ほんの一瞬だけ自分の身体が宙に浮いたような気がした。―が、その浮遊感も、落下によって上顎内部がクラブヘッドに叩きつけられた激痛によって、瞬時に消え去った。 「がぁっ!」 バランスを崩し力の抜けた状態の岬は、春日署々長によって、上顎に引っ掛けられるような状態になったゴルフクラブで上体が垂直になるまで持ち上げられた。 署長は、今、三番アイアンのシャフトが水平を保つように両腕に力をこめてクラブを握り、支えている。白髪となった初老の年齢にはかなりの力仕事に見えたが、彼の顔面には、その額にわずかな汗を滲ませている労力すら楽しむような、満足そうな笑みが浮かんでいた。 岬の手首は手錠を嵌められ背後でロープによって彼女の足首に固定されており、大きく仰け反った上半身のその口元にアイアンの先端が引っ掛かっていた。 口の中に挿し込まれたゴルフクラブ以外に膝頭でしか体を支える術がなくなった岬は、バランスを崩さないよう反射的に足を「ハの字」に開いた。 「そうそう…ずいぶんと楽になっただろう。」 署長は唇の端を歪めて笑って言いながら、クラブのシャフトをゆっくりと左右に振りはじめた。岬の上体が振り子のようにゆっくりと揺れる。 「ぁっぁっぁっぁっぁっぁっ…」 その頼りなげな助けを求める声は、岬の口からというより喉の奥から響いている。身体の振幅が徐々に大きくなるにつれ、岬が絨毯に踏ん張るようにして置いている膝頭の幅も、ゆっくりと開いてきた。 「おやおや、足元がはしたない。」 背後から、聞き覚えのある声がした。その声の持ち主は岬が一年前に配属されていた生活安全課内の係長の声だった。―いや、係長というのは彼女が通称「生安」にいた当時の事で、彼はこの春、「三人抜き」と署内で囁かれた異例の人事で課長に昇進していた。 蛇のような目をした、その鮫島という名の生活安全課々長は、とかく黒い噂の絶えない人物でもあった。 彼の言葉によって、あらためて自分の今の姿勢を意識させられた岬は、自分の膝頭が、ストッキングを通して、スカートの裏地にではなく、絨毯に直接触れていることに気がついた。膝を開いた事で、スカートの裾が膝の上まで捲くれている自分の姿を否応なしに想像させられた。―だが、彼女は、署長が弄ぶように左右に振りつづけるクラブのせいで上体が不安定なため、その両足を閉じる事は出来なかった。 さらに生安課長、鮫島の声が背後から響く。 「岬クン。最近、体は鍛えているかね。君には交通課でも抜群の評価が与えられているそうだが、文武両道は基本だよ。」 その声を聞いて、署長のクラブの動きが止まった。 「鮫島、何か考えがあるのか?ん?」 「ふふふ、署長。楽しみ方にも色々あると思いまして…。」 「ほう。」 「体力検査、というわけではないですが、岬クンを、今の姿勢から…」 「ん?」 鮫島は言葉をつづける。 「ブリッジの体勢に持っていくと面白そうですな。」 -つづく- |
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