婦人警官 屈辱 |
part 03 |
鮫島の言葉を聞いた署長は「ん?」と軽く何かを考え込むような声とともにその提案をした部下の方を見たが、その後すぐに喉の奥で低く笑いはじめた。 「く…くくくく、くくく…」 岬の口の中で、署長の笑い声に合わせて三番アイアンの先端が小刻みに揺れた。そのクラブは署長の笑みが止むと同時にピタリと止まった。そして次の瞬間、その鉄の物体は岬の口腔内部を「トン」と突くように軽く押した。 「ぁぐ!」 反射的に小さな叫び声を上げた岬の上体が後方に揺れた。しかし、署長がクラブで突いた力はそれほど強くはなかったため、彼女は、床に接地した膝頭を再びやや開く羽目になったが、後ろに倒れることなく、なんとか踏ん張るように辛うじて今までの体勢を保った。 が、クラブのヘッドはゆっくりと岬の舌に押し当てられ、その表面をゆっくりと滑るように、ジワジワと喉の方へと向かっていく。 「ぅう!」 小さな声をあげながら、まるで扁桃腺に達しようとするゴルフクラブを避けるように岬は上半身を反らす。 岬は、身体が反れた事で、彼女の正面に立ちはだかる春日署々長と目が合った。 「ふふ…そうだ、そうだ、ゆっくり、ゆっくり。」 署長の顔にはサディスティックな笑みが浮かんでいた。その表情を見た岬は、このまま後方に倒れてしまおう、と思った。 鮫島の言葉と署長のクラブによるプレッシャーのせいで、自分は為されるがままに、ゆっくりと体勢を崩すことなく上体を反らせながら、ブリッジの姿勢をとらねばならない―という観念が岬の中に生まれていた。だが、実はそんな事はなかったのだ。 ―彼らをそうやって楽しませる必要は一切ない。 姿勢を崩し後ろに倒れこんでしまった方が、彼らの卑劣な期待を裏切る事になるし、第一、自分が楽だ。背筋を精一杯使ってブリッジの体勢をとる必然性などはどこにもないのだ。 岬は、肩から床に倒れこもうとした。 しかし、彼女は床に全身を預ける事はできなかった。岬は後頭部に何か堅い物体を感じていた。その物体は、彼女がわざと後方に倒れこむのを押しとどめていた。 「岬。諦めるなんて君らしくない。補助してやる。」 後方から軽い笑いを含んだ鮫島の声がする。岬が後頭部に感じた物体は彼の靴の底だった。その靴底は岬の頭部を前方に強く押した。 「ぐぇっ!」 口の中に入れられたままだった三番アイアンが彼女の口内の奥を突き、岬は喉で悲鳴をあげた。そして彼女の頭が反射的に再び後方に反らされた時に、鮫島は、岬の後頭部に押し当てた靴の部分を、底から足の甲の側に変えた。 彼の爪先は、まるでサッカーボールを扱うかのように、その上に乗った岬の頭部を、足首のスナップを使って、軽く何度か弾いた。 「楽しいなぁ、え、岬よ。お前をこんな風に扱えるとは思ってもみなかったよ。」 その台詞を聞いて、岬は、背後にいて表情を伺う事のできない鮫島の、かつてよく見た冷たい笑顔を思い浮かべた。 ―わたしは殺される。 改めて岬はそう思った。 しかも、この部屋の中にいる男性警察官たちを性的に十分満足させた上で殺される。 では、いったい、自分はあとどのくらいの時間生きられるのか。その時間は、自分にとって長いのか短いのか。屈辱にまみれ、終わりの見えない長い長い時を過ごす事となるのか、―それとも、死を目前にして、時は呆気ないほど短く行き過ぎてしまうのか。 自らに降りかかるこれからの出来事に慄然としながら思いを巡らすうちにも、春日署々長の持つ三番アイアンは、岬の口の中を奥へ奥へと進む。それにつれて、岬の上体も、鮫島の靴先に支えられながら、ゆっくりと後方に傾いていく。 ゴッ。 低く小さな音を立てて、岬の後頭部が床に接地した。 その瞬間に、彼女の耳には、既にその表情は視界の外となってしまった春日署々長の高笑いが聞こえてきた。 -つづく- |
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