婦人警官 屈辱 |
part 18 |
鮫島が、玩具に飽きた子供のように、バイブレータのリモコンスイッチを岬の目の前に放り投げた。ピンク色の小さなボックスが乾いた音を立てて机上に転がる。その表面にあった赤いランプは既に消えている。 だが、岬の中では、バイブレータが今だ不快に蠢めいている。プラスティック製の男根に微振動を与えているのは、その底面に押し当てられた春日署々長の膝だ。執拗に細かく震えつづける膝の動きに込められた憎悪を、岬は感じる。岬の股間に刺激を与え続けている署長が岬に投げた言葉が、彼女が感じたその憎しみの印象をさらに強固なものにする。 「もっと苦しめ、岬。―だが、たとえお前がいくら苦しもうと、その苦しみが我々の苦しみを越えることは…ない。」 署長の言う「苦しみ」とは何か。「我々」とは誰か。そして、鮫島が語った「絶望」とは…。 ―それらを意識する余裕は、今の岬には、ない。ただただ、自らを襲う理不尽な災厄から、今にも折れてしまいそうな意思を守ることに精一杯だった。 岬の股間に当てられた春日署々長の膝の動きは、それからもしばらくの間つづき、そして静かになった。片足を床に下ろした署長は、ゆっくりと顔を岬の耳元に近づけて言った。 「所詮、強姦なんて、暴力で女の肉体をボロボロにするだけの行為ににすぎん。」 岬の腰、ショートガードルに春日署々長の手がかかり、その白い下着をおろし始める。今までの彼の荒々しい行為と違い、その動きは、ガードルの下にあるショーツを一緒に脱がしてしまわないような丹念さで行われた。そこには、まるで柔らかく傷つきやすい果実の皮を剥くような丁寧さがあった。 「―自尊心も―誇りも―プライドも、決して傷つくことはない。もしも、心が傷ついた時は、そいつの心が…心が弱かったって事だ。」 ショートガードルが膝まで下ろされ、バイブレータはその重みでショーツ股間の布とともにほんの数センチ下降する。 「なんて事を言うの!」 署長の話が岬の怒りに火をつけた。 デスクに上体を押し付けられた岬は、署長を振り返ることをせず、椅子に座った鮫島を睨む。鮫島の横には若い制服巡査が立っていた。巡査は、油紙に梱包した塊を鮫島に渡すところだった。 「そんな目をするなよ岬。本当の事じゃないか。」 薄燈色の油紙表面を結んだ紐を器用にほどきながら、鮫島が言う。油紙の中から自動式の拳銃が現れた。拳銃本体と別になった弾倉をグリップに挿入した鮫島は、岬から目を逸らし、若い巡査の方を振り向く。 「―トカレフじゃないのか。」 拳銃はベルギー製だった。 「シナリオでは…宝石店の件とは別の事件となりますので…」 若い巡査の答えに鮫島は微笑みながら言った。 「―ふふ。お前も少しは使えるようになったじゃないか。」 ジャキッ! 遊底をスライドさせ、薬室に弾丸を装填する音が署長室に響く 鮫島は、親指で安全装置をロックし、いつでも解除できるように、セイフティレバーに指を掛けたまま、拳銃の銃口とともに再び岬の方を向いた。 「自尊心なんてモンは、自分でドブに捨てない限り、何が起ころうとも決してなくならないんじゃないのか?―ん、岬よぉ。」 岬には鮫島の言葉の真意が理解できない。鮫島に投げ返す言葉を失っている岬に、背後から春日署々長が語りかける。 「自分で自分自身を捨てた瞬間に、本当の苦しみがはじまる。」 そして、署長の手はショーツごとバイブレータの根元を掴み、静かに引き下ろしはじめた。ピンクの擬似男根が、岬の膣の内側を、ペニスに似せて作られた幅広の亀頭部分で僅かに押し広げながら、ゆっくりと出口に向かって通過していく。 最後に膣口が広がり、亀頭が外に出て、ヴァギナが閉じる。岬は、そこが閉じた瞬間に自分の性器の粘液部分が密着する感触を、非常に下品な感覚として味わった。 バイブレータの下降とともに、岬のショーツの腰にあるべき部分は、彼女の臀部を露出させ、太腿の付け根の位置にまで下がり、止まっていた。 バイブレータを抜いた瞬間に、署長がその手を離したのか、ゴトリと床の絨毯に物が落ちる音がした。 署長の手は岬の白いショーツを掴み、太腿の中ほどまで下げ、そして彼女の右臀部を強く叩いた。 ピシャッ! 平手打ちを食らった岬の尻が立てた甲高い音につづいて、署長の声がする。 「もっと尻を上げて、足を開くんだ。」 そう言いながら、署長は岬の腹に手を回し、腰が高く上がるように自分の方へ引き寄せ、さらに、岬の両足のくるぶしを、内側から足払いをかけるように蹴った。 彼女の左右の足が大きく開かされ、中途半端に脱がされていたショートガードルとショーツがピンと広がるように張った。 岬の性器に署長の性器の先端が当たった。 「正義のヒロイン大ピンチ。」 鮫島が茶化すように言った。 「ここで、意外な展開があって、正義の味方はピンチから逃れる。」 鮫島は、岬に向けていた銃口を上方にずらす。その銃口の線上は春日署々長がいる位置だった。瞳を大きく見開いて驚きの表情で鮫島を見ている岬に、彼は話しつづける。 「ガキの頃、何度もテレビで見せられた『お約束』だ。―そういう子供だましが、俺は大嫌いでなぁ…」 銃口は降下し、再び岬の額を狙った。そして、その銃口はゆっくりと岬に近づき、彼女の額に押し付けられる。 岬は為す術なく鮫島を見ている。 「世の中、テレビの中みたいに上手くはいかない。でも、正義は勝たなきゃなぁ…どんな手段を使っても…な。―そうやって、俺は自分の正義を貫くことにした…。」 鮫島の顔に、また感情のない笑みが浮かんだ。 「そして、その瞬間に、俺は、大切な何かを…捨てた。」 鮫島が話し終えるのを待っていたかのように、春日署々長のペニスが情け容赦なく岬の内部へ奥深くまで、ずぶりと挿入された。 -つづく- |
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