婦人官 屈
  part 19


 背後から岬を犯す春日署々長の片手は、手錠で背中に繋がれた手首の上から岬の上半身をデスクに押さえつけるように置かれている。岬の後ろで、署長の腰がゆっくりと往復運動をスタートした。
 後方から岬を貫く春日署々長の動きに伴って、岬の上体も前後に揺れる。そして、彼女の前方には鮫島が持つピストルの銃口があった。
 コッコッコッ…と、静止した銃口に岬の額が、署長の腰のリズムに合わせて、軽く当たる。

「そ…そんな事…、せ・正義のためって言えば全てが許されるわけじゃない!」

 署長のペニスが肉体に齎す刺激を忘れようと、岬は鮫島を睨み、言葉を投げる。

 ゴツッ!

 そのとたん岬の額が激しく銃口にぶつかった。
 だが、鮫島に投げた台詞に、彼の銃口が反応したのではなかった。銃口は相変わらず静止したままだ。春日署々長のペニスが単調な往復運動を中断し、まるで怒りを込めたような、深く強い一撃で岬を突いた。鮫島に投げた言葉に、先ず反応したのは、岬の背後の署長だった。

「何も、解かってはいないんだな、君は…」

 岬の体にペニスを根元まで埋ずめた位置で腰を止め、春日署々長が呟いた。

「解かりたくもない!」

 岬が吐くように答える。
 署長のペニスは、岬の膣内をゆっくりと滑り、その先端が出口近くまで来ると、また勢いを伴って突き刺すように深く奥を目指す。
 再び、岬の額と銃口が、ゴッと鈍い音を鳴らした。

「こちらも、解かってもらおうとは思わんが、岬クンにしては、あまりにも理解力に欠ける…残念だ。」

 そう言いながら、署長は岬の背中を押さえていた手を離し、両手を岬の臀部左右それぞれに宛がった。自分の体温が上昇しているのか、老いた署長の手が冷めているのか…なだらかな丸みを帯びた皮膚の表面に置かれた掌の輪郭が鮮明に岬の頭に伝わった。

「あなたたちに警察官の信念はないの!」

 ゴッ!
 さらに、額と銃口がぶつかった。
 だが、署長の男根が新たな一撃を加えたわけではなかった。―今度は、鮫島が拳銃を彼女の額に押し付け、そして諭すように言った。

「警察官の信念なんてモノはないんだよ。俺の中にも…そして…もちろん、お前の中にもな。―あるのは、俺の信念と、お前の信念だ。警察官の信念なんてやつは、実はどの警察官の中にも無い。それは、ただの幻想だ。」

 声は聞こえるが、拳銃を持つ腕が視界いっぱいに広がり、鮫島の表情を窺うことは出来ない。

「―もうすぐ15年になるのか…」

 鮫島がポツリと言った。

「警察官になった俺の事を一番喜んだのは、両親じゃなく、祖母でなぁ…。なにしろ明治生まれの人間だ。警察手帳を水戸黄門の印籠だと思ってるんだ。警察の桜の御紋も、皇室の菊の御紋も同じなんだよ…可笑しいだろう。」

 優しい口調だった。

「そん時に、俺の中に膨らんでいた警察官の信念なんて幻想は、パチンと音を立てて割れちまったさ。」

 鮫島が漏らすようにそう言うと、岬の頭の中にクッキリと描かれている春日署々長の掌の輪郭―その親指が動いた。それは、臀部左右のふくよか双丘の中心を走る境界線に指先を立てると、その部分を、ゆっくりと外側に開き始めた。

「く!」

 岬は上下の歯を強く噛みしめ、小さな声すら上げないように努めながら、腰を引き、その手から逃れようとした。だが、署長のペニスが差し入れられたままの下半身は、デスクにぶつかり、もはや前には進めない。手錠で繋がれた背中側の両手を伸ばして、署長の手を振り払おうとするが、机に押し付けられた前屈姿勢のままでは、指先は空しく宙を掻くだけだった。
 そんな彼女の抵抗を楽しむかのように、署長が下卑た口調で言った。

「尻の穴を責められるのが嫌な女もいれば、好きな女もいるだろう。正しいセックスのやり方が存在しないのと一緒だ…」

 春日署々長の台詞を聞いた鮫島が声を出して笑った。

「フ…フハハハハ…まさしく、その通りだ…署長の言うとおりだ。岬、そういう事だよ。互いのやり方が少しだけ違う―ただ、それだけさ。」
「ところで岬クン…」

 背後から老いた声が問いかける。

「君はどっちだ?―ここを責められるのが好きなのか?それとも嫌いなのか?」

 声の持ち主は、その両親指で左右に開いた岬の臀部の肉が閉じないよう、左手の指で固定しなおし、右手中指をその外部に晒された中心部分に置いた。

「う!」

 ひやりと冷めた署長の指の腹が肛門に触れた時、岬は、噛みしめた奥歯のさらに奥、喉から小さな悲鳴を漏らしてしまった。

「まぁ、好きだろうが嫌いだろうが…答える必要はない。嫌いだと言われてもやめる訳ではないからな。」

 春日署々長はそう言いながら中指をアナルの内部へと埋没させはじめた。その指は、岬の性器の中にあるペニスをなぞるかのように下方に力を込めて、彼女の直腸内部を這うように進んだ。指の根元が入り口に達し前進をやめると、今度は膣に差し込んだままだった男根をほんの少しだけ後退させた。
 亀頭部分の拡がりが指先のある位置で止まった。

「!」

 岬の全身に悪寒が走った。
 穴の奥の指先は、もう一方の穴の中あるペニスの先端を刺激するように細かく動き、亀頭もその指の動きに合わせ、小さく前後に動きはじめた。肛門の中で掻くように動く指先は、まるでマスターベーションのように、そこに接近し小さな往復運動を繰り返す膣内の男性器の先を撫でている。
 二箇所の穴の内部から指と亀頭に押され、収縮させられるその一点で発生する痺れは、ペニスが通過する度に岬の全身に拡がっていく。

 ガッ!

 岬は自分の頭を机に打ちつけた。
 繰り返し襲ってくるその痺れに耐えるには、その方法しか思い浮かばなかった。


  -つづく-


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