警官     第一部   第二部   第三部   第四部


第一部


 1. 発端

  僕が住んでいる地方都市は、県庁所在地の次に人口が多い街だ。
  車が無いと不便な一方、市街地には駐車場が少ない。
  簡単な買い物は路上駐車で済ませた方が早くて楽だから、休日の繁華街には違法駐車の列ができる。

  ある晴れた日曜日の午後、僕は繁華街の通称「中央通り」に車を停め、本屋へ買い物に行った。
  駐車禁止はわかっていたが、パーキングチケットのスペースは満杯。
  近くの駐車場も5、6台の車が待っている状態だったから仕方がない、と思っていた。
  ほんの10分ほどして車に戻ってみると、サイドミラーに例のオレンジ色の札が下がっていた。

  免許を取って14年。はじめての交通違反だ。
  警察署へ行き、手続きを済ませ、反則金を納付してから一週間ほどたった頃、無性に駐車禁止の取締りに対して、怒りがこみ上げてきた。
  部屋で、青い切符を見ながら怒りのやり場に困っていると、切符の片隅に書かれた「広田京子」という署名が目に入った。

  この「広田京子」という名の女性が、僕の車に駐車禁止の札をつけた婦人警官なのだろうか?
  そう考えた瞬間、僕の中で、カチリと何かのスイッチが入った。

  こうして、僕の、婦人警官・広田京子への復讐計画が始まった。


 2. 確認

  駐車違反から半月ほどたった頃、僕はバスに乗って中央通りに行ってみた。
  交通違反取締り中の婦人警官を見つけるのが目的だ。

  通りを何度か往復していると、婦警が二人、違法駐車車輌のタイヤにチョークでマーキングしていた。
  そのうちの一人の顔には確かに見おぼえがある。
  警察署で手続きを担当した婦警だ。彼女の事務的な口調がよみがえってくる。

  「あそこが駐車禁止の場所とわかって車を停めたんですよね。」
  「違反をしたと認められたのならばここに拇印か印鑑をお願いします。」
  「納付書をお渡ししますので、こちらに書かれた期日までに反則金を銀行か郵便局から納めてください。」

  彼女の年齢は多分27、8歳だろうが、化粧が薄いため25歳以下に見えないこともない。
  髪は肩までのストレートで、顔立ちも決して美人というわけではない。
  ついテレビドラマに出てくる「学級委員」を連想してしまった。
  知識はあるが気が利かない。理屈と論理で人を納得させようとする。馬鹿騒ぎする連中を、輪の外から冷静に眺めている、というタイプ。
  僕は今まで、そんなタイプの女性を「女」として意識した事がなかった。
  だが、婦人警官の制服を身にまとった彼女を見ながら、なぜか、胸の鼓動が高鳴っていくのを感じていた。

  僕は、二人の婦警の後をつけ、警察署へと入っていった。
  エレベーターへ向かう婦警を見送りながら、1階正面の事務職の女性に声をかける。

  「すみません、道路使用許可の用紙はどちらでいただけますか」
  「それなら、交通課になります。そちらのエレベーターで4階に行ってください。」

  事務の女性は、先程、二人の婦警が乗ったエレベーターを手で示した。

  交通課の部屋に入ると、手前の席で書類に目を通していた男性の警察官に、道路使用許可の申請用紙を貰いたいと告げた。
  男性警察官は書類から顔を上げ僕を見ると、部屋の奥に向かって声をかけた。

  「おい、広田君。道路使用許可の申請用紙を、1…いや2部、取ってくれ!」

  奥から返事が聞こえ、例の婦警が手に書類を持ってやってきて、男性警察官に渡した。
  彼女は僕と目を合わせることなく、再び部屋の奥へと戻っていく。

  僕は男性警察官の説明に頷きながらも、心の中で「広田京子」を確認できた喜びを噛みしめ、彼女が広田京子であったことに安堵していた。
  そして、心の奥で、こう思っていた。

  「もしも彼女が広田京子でなかったら、僕はどうしたのだろう…
   交通違反の手続きを担当した、広田京子でない女に罰を与えるのか?
   それとも、この警察署の中から広田京子を、なんとしてでも探し出すのか?」

  交通課のオフィスの奥で、広田京子が勤務する様子を眺めながら、その問いに対する答を、僕は見つけかねていた。
  僕の計画は、始まったばかりだ。


 3. 追跡

  翌日、仕事を終えた僕は、勤め先から警察署へ向かった。
  警察署の前についたのが18時30分。
  通りをはさんで署の正面に市役所がある。
  その入口前広場のベンチに腰掛け、広田京子が一日の勤務を済ませ、家路に向かうのを待っていた。
  20時になっても、彼女は出てこない。公務員である警察官は通常、17時で仕事を終えるのだろうか。
  僕は、仕事のスケジュールを調整して、会社から休みを一日、貰わなければと、考えていた。

  次の週の水曜日、会社を休んだ僕は、16時に市役所のベンチに腰掛け、警察署の入口に目を凝らしていた。
  16時15分、彼女が現れた。
  制服姿で別の婦警と二人で正面玄関から、署内に入っていく。きっと、市街地で駐車禁止の取締りを行っていたのだろう。
  この時刻に署に戻ってくるところが、公務員的な匂いがする。
  多分、本人は意識してはいないのだろうが、彼女達、婦人警官の正義感とはこんなものなのかと想像し、思わず苦笑してしまう。
  17時を過ぎると、市役所からの勤務を終えた人々の流れが、僕の周りを徐々に賑やかにしはじめる。

  17時25分。
  私服姿の広田京子が警察署の玄関に現れた。
  薄いブルーのニットのセーター、ベージュのロングスカート。その上に紺色のハーフコートを羽織っている。
  肩に下げている黒いバッグにはどこといって特徴がない。ブランド品ではないようだ。
  彼女は、JRの駅の方向へと歩き出した。

  彼女の後をつけながら、かなり歩くのが早い事に気が付いた。男の自分が早足にならないと追いつけない。
  駅ビルへ着いた彼女は、地下の食品売り場でドレッシングを一瓶だけ買った。
  そして、階段で一階へと上がり、本屋で文庫本のコーナーを一巡した後、女性向け月刊誌を一冊買った。

  定期券で自動改札を抜ける彼女を見失わないよう、僕は急いで、多めの金額で切符を買う。
  彼女は下り線のホームで快速電車を一台見送り、この駅始発の各駅停車の車輌に乗り込んだ。

  きっと快速の停まらない駅で降りるのだろうと思いながら、彼女の隣に、若干の距離を取って座った。
  彼女は、色あせた書店のカバーがしてある文庫本を座席で読みはじめた。
  文庫本の書名は解らなかったが、登場人物はカタカナで記されていたので外国を舞台にしたもののようだ。
  彼女がページをめくると、「第7章 第3の殺人 」というコーナータイトルが目に入った。
  彼女が読んでいるのは海外のミステリーらしい…

  婦人警官が電車の中で連続殺人の推理小説を読んでいる。
  彼女が急に可愛らしく思えた。

  広田京子は、隣の市に入ってから2つ目の駅で電車を降りた。
  この駅は、その市の名前が付けられた駅で、「快速電車が停まる」駅でもある。
  彼女は、夕方のラッシュで混みあう快速電車を避けて、座って本を読むために各駅停車を選んだのだ。

  僕の中で、婦人警官の彼女がどんどん愛しくなっていく。
  彼女の生活リズムから垣間見える精神的な潔癖さが、僕の中にある彼女への魅力を加速させる。
  その、潔癖さを汚辱にまみれさせてあげるのが、彼女に対する僕の礼儀だ。

  広田京子を単にレイプすることで復讐を果たそうとしていた自分の考えは変化していた。
  彼女への復讐は、静かに、冷ややかに、そして、ゆっくりと進行しなくてはならない…


 4. 報告

  駅を降りた広田京子は、メインストリートへ通じる賑やかな北口には向かわず、南口の改札へと向かった。
  そして、駅から歩いて5分ほどの月極駐車場へと入っていく。
  彼女が乗り込んだ車は赤いシビック。旧型だがナンバーの数字が比較的新しいので中古車として買ったのであろう。
  彼女は自宅から駅まで車を使って往復しているらしい。

  彼女の自宅をつきとめるために、僕は翌日の昼休みに、駐車場を管理している不動産屋へ電話をした。
  駐車場に停めてある彼女の車に自分の車が接触してしまったと嘘をついた。
  そして、持ち主の連絡先を知りたいと問い合わせてみたのだ。
  初老らしき声の不動産屋は親切にも彼女の名前に自宅住所、そして電話番号を教えてくれた上、
  「広田さんは警察署にお勤めの方らしいですよ…」などと同情したように話してくれた。
  僕は、自分の名を名乗る必要に迫られることなく電話を切ることが出来た。
  都会に暮らしているとこう上手くはいかなかっただろう。

  土曜、日曜、そして平日の夜。必要な時は会社を休み、僕は彼女の暮らしぶりを調べた。

  一ヶ月もすると彼女の事がわかってきた。

  広田京子の自宅は駅から車を15分ほど走らせた郊外の住宅地にある。
  両親と彼女の3人で暮らしており、二階が彼女の自室のようだ。
  現在、付き合っている男性はいないらしく、起床、通勤、勤務、帰宅、夕食、就寝という変化のない毎日が多い。
  ときには同僚や友人と夕食をともにする。
  一週間から十日に一度ほどのペースで警察署に泊まる事がある。当直なのだろう。

  そんな彼女の生活の変化といえば、突然の署からの呼び出しのようだ。
  署から呼び出しがあると、彼女は電車を使わず、自宅から車で、直接、警察署に向かう。
  一度、電車の中で携帯電話を受け、例の月極駐車場から自宅と反対方向へ車を発進させたことがあった。
  異性とでも会うのかと思い、僕は一抹の寂しさを胸に、そのまま電車を使って、自分が住む町へと戻った。
  しかし、部屋に戻る途中の僕は、警察署の裏手の駐車場に赤いシビックが停まっているのを発見した。

  その時の僕の気持ちをどう表現すればよいだろう。
  僕の胸一杯に満足感が拡がった。
  婦人警官、広田京子…彼女は、映画女優のような美貌の女性でもなんでもない。
  しかし、女性を恥辱の底に突落したいと思う者にとって、なんと格好のターゲットなのだろうか。

  警察署裏手の赤いシビックを見た時、僕は、婦人警官、広田京子に出会うきっかけとなった「駐車違反」という運命のいたずらに
  感謝すらするようになっていた。


 5. 計画

  火曜日の夜、僕はスクーターに乗って広田京子の自宅近くで、彼女の赤いシビックを待っていた。
  ここは彼女の帰宅ルートの中で最も見通しが悪い路地だ。
  いつもの各駅停車に乗っていれば、彼女は19時20分頃、ここを通る。

  緊張をほぐすためにタバコを一本吸う。
  彼女を尾行しつづけた時も、こんなに緊張はしなかった。
  乾いた口の中をタバコの煙が刺激し、唾液が出る。
  その唾液は耳の内側あたりから分泌されたようで、非常に苦かった。

  車のエンジン音が近付いてきた。広田京子だ。
  彼女の車はこの路地で一時停止をしなくてはならない。停止線は交差点の奥にある。
  婦人警官である彼女は、多くのドライバーがそうするように、
  その停止線は無視し、徐行しながら、運転席から通りが見渡せる場所まで、ゆっくりと車を進める。
  毎日通る道路であるとの慣れと油断がそうさせるのだろう。
  そこが、僕が発見した、広田京子の婦人警官としての唯一の弱点だった。
  ブロック塀からシビックのノーズがのぞく一瞬。その瞬間が狙いだった。

  僕はスクーターを急発進させ、彼女の車のフロントフェンダーをよけるようにして横転した。
  アスファルトの路面を滑りながら、時間がスローモーションで流れるのを感じた。
  ゆっくりと立ち上がりながら、僕は赤いシビックの方を見た。
  慌てて運転席から出てきた広田京子の表情は、ヘッドライトの灯りが眩しくて、よく見えなかった。

  「大丈夫ですか。」彼女が僕に声をかける。
  「体のほうは、かすり傷程度だと思います。だけど…」

  ヘルメットを脱いだ僕は彼女に答えながらスクーターの方に目をやった。彼女の視線もスクーターの方へと移る。
  スクーターの破損は僕の予想以上に大きかった。
  傷が軽微であったときのことを考えて、あらかじめ片方のウインカーだけは割っていたのだが、その必要もなかった。
  僕はポケットから携帯電話を取り出しながら「保険のほうを使って頂いた方がいいみたいですね。
  一応、警察に連絡しますけど、よろしいですよね…」と彼女に言ってみた。
  瞬間、彼女の顔が曇る。

  「あの、私、以前にも違反をしていて、今、点数がないんです。
   お体のほうが大丈夫なようでしたら、警察に連絡するのは待っていただけませんか。スクーターの分は弁償しますので…」
  「えっ!いいんですか?決して安くはないと思いますよ」と僕。
  「はい、構いません。」

  そう答えると、彼女は一旦、車に戻り、バッグを持って僕のところへ来て、B6サイズのノートを取り出しながら言った。

  「私、広田と申します。名前と住所、そして自宅と携帯電話の番号をお渡ししますので、連絡はこちらの方にお願いします。」

  僕はペンを走らせる彼女の横顔を見ながら「お勤め先の電話番号は…やっぱり、教えたくないって事ですよね。」と尋ねてみた。

  「申し訳ありません…あの、会社の方にも事故のことは知られたくないんです。
   自宅の電話にはファックスも付いていますから、修理費のお見積りが出ましたら、お知らせください。」

  僕は、広田京子の表情に興奮していた。
  不安、困惑が混ざったその表情。
  僕に対して、すまなそうな表情を見せながらも、勤務先を「会社」と言った瞬間の広田京子の口元。―そのわずかな躊躇。

  彼女はノートの連絡先を記したページを丁寧に破りながら
  「あの、よろしければそちらの連絡先を教えていただきたいのですが。」とノートを差し出した。
  彼女の指先に見とれていた僕は興奮を悟られまいと、ゆっくりとノートを受け取った。
  彼女の手と僕の手が触れた。その指は冷たかった。いや、僕の指が熱くなっていたのかもしれない。

  「あ、私、田中といいます…」

  僕は広田京子をこの場でレイプしたいという衝動を抑えながら、
  自分の本名と携帯電話の番号だけをノートに書いた後、スクーターを起こしエンジンがかかることを確認した。

  「ウインカーとミラーが割れてるのと、傷の激しい部分が交換ということになるでしょうね。
   怪我がなかったのでお互いよかったですね。何とか自力で帰れそうですし、今日のことは、また改めて連絡します。」

  僕が微笑を作ってそう言ったとき、彼女の表情がはじめて柔らかくなった。
  その顔を見たとたん、僕は割れたミラーを触りながら「お巡りさんに見つからないように帰らなきゃいけないですね。」
  と言ってみた。
  彼女の顔が、一瞬凍りつく。
  ―が、すぐに気を取り直した彼女は申し訳なさそうな表情に戻り、「すみません。」と頭を下げた。

  部屋に戻った僕は、きれいな筆跡で彼女の連絡先が書かれたノートを見ながら、これからの計画を考える事にした。
  こんなにワクワクした気持ちになったのは、本当に久しぶりの事だった。


 6. 連絡

  翌日の昼間、会社を早退した僕は警察署の見える市役所前広場の電話ボックスから、
  広田京子が署に戻っていることを確認して、彼女の携帯電話にではなく警察署の代表番号に電話をかけた。
  中年女性を思わせる声をした女性に「交通課の広田さんをお願いします」と告げると、
  一言の返答もなく受話器からの音が『峠の我が家』のメロディに切り替わった。
  しかし、それもほんのわずかの間だった。
  受話器の向こうから聞き覚えのある声が響く。

  「お電話かわりました。私が広田ですが、どちら様でしょう。」
  僕が自分の名を告げなかったせいか、詰問するような口調だ。

  「田中です。昨日の事故の…、わかりますか。」

  ほんのわずかの間があり受話器の向こうの声が答える。

  「ハ、ハイ…」
  「あまり動揺しないで下さいね。周りの人にわからないように、僕のいうことにハイかイイエで答えてください。
   いいですか。」

  再びの間の後に彼女が弱々しく答える。

  「ハイ。」
  「これから5分後、署内であなたが一人になれる場所に移動できますか。」

  間、そして「ハイ」の返事。

  「では、5分後、あなたの携帯電話を鳴らします。一人の場所で取ってくださいね。」
  「−ハイ、わかりました…」

  僕は、電話を切った。

  5分後、今度は自分の携帯電話から彼女の携帯電話に連絡をした。
  僕が話し始める前に、彼女は押し殺した声だったが早口で言った。

  「一体どういうつもりですか。なぜ、その…私が…」
  「広田さん、落ち着いて僕の話を聞いてください。
   あの事故については、もう一度、二人で直接話し合った方がいいと思うんです。」
  「話し合いって…、スクーターの弁償の件はもう…、いえ、その、なぜここに電話を…」
  「そういう件も含めてお話をしましょう。」

  うろたえる彼女の声を聞きながら、僕は興奮を抑えるために拳を握って手のひらに爪を立て、努めて冷静に話を続ける。

  「今日、お仕事は何時に終われそうですか。夕方6時には署を出られるでしょうか。」

  彼女は沈黙している。

  「返事をして下さい、広田さん」

  小さな声が受話器から返ってくる。

  「ハイ、6時には…。でも、直接、田中さんと会わなくてはなりませんか」
  「広田さんが会う必要がないと思われるのなら、無理にとは言いませんが、
   僕は事故の被害者として話し合いに応じていただきたいと、ただそう言っているだけなんです。
   広田さんも後味の悪い思いはしたくないだろうと思いまして…
   僕は、広田さんのお立場を考えて言っているつもりなんですが…わかりますか。」

  数秒の沈黙の後、広田京子は重い口を開いた。

  「わかりました。どうすればいいのですか。」
  「市役所の地下駐車場に僕の車が停めてあります。地下2階のエレベータ前で待ち合わせましょう。
   署を出る時間がわかったら、昨日教えた携帯の番号に電話して下さい。それでは、後程…。では、失礼します。」

  広田京子は黙ったままだった。
  そんな彼女を咎めるように、僕は再び「では、失礼します。」と今度は強い口調で言った。
  広田京子の返事は蚊の泣くような声になっていた。

  「し、失礼…します…」

  17時40分、予定より20分早く広田京子は地下2階のエレベータ前にやってきた。
  今日の彼女はブラウンのダッフルコートを着ていた。
  コートの色とあわせているのか、茶系のジャケットに白のブラウス、
  そして膝を隠すくらいの濃紺のタイトスカートを身につけている。

  硬い表情の広田京子に「こんばんは」と声をかけると、彼女は不安の中に怒りが読み取れるような瞳で目礼を返した。
  僕は微笑を崩さずに「突然お呼び立てして、申し訳ありません。」と語りかけ、
  彼女を車内に招き入れると、緩やかなスロープを登り、薄暮の市街地へと車を走らせた。


  -つづく-


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