婦人官 汚 01   02   03   04   05   06   07   08   09   10   11   12   13   14   15  



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29.

「ゃ…ぃや!―出来ない…ここじゃ、出来ない。」

葉子は頭を振りながら泣き声で訴えたが、金髪は、彼女の腹を爪先で小突くように軽く蹴りつづけた。

「―何を嫌がってんだよ。無駄だっつーのが解んねぇのか。
 てめぇはな、ココで便器に跨って糞、垂れるか、パンツ履いたまんま、そん中に糞を漏らすか、
 どっちかしかねぇんだよ。」

そして、金髪は葉子の脇に屈みこんで、彼女の頭髪を掴んで言葉をつづけた。

「甘えた事、抜かしてっと、また顔洗うぞ!その目が醒めるようにな!―それとも…」

彼は、葉子の髪を鷲掴みにしたまま、彼女の頭部を持ち上げるように立ち上がった。

「―それとも、嫌でも糞が出るようにしてやろうか!腹をこっちに向けろや、ホラァ!」

髪を引っ張られて立ち上がった体勢になった葉子を、金髪は自分と向き合わせるように、
力ずくで回転させ、そのまま、トイレの壁に向かって投げ出した。

「!痛ッ!」

手錠で繋がれた左手と右足を捻るような格好で個室の壁に背中を打ちつけた葉子の声が上がる。
―が、間髪をいれずに金髪の靴の裏が、中腰になった葉子の腹部に乗ってきた。

「ホラ…」

金髪の声と同時に、葉子の腹に、グッとテンションがかかる。

「ぅ!」
「ホラ…!ホラ、ホラ…!ホラ、ホラ、ホラァ!」

金髪はひとつ声を上げる度に、葉子の腹を、その靴底で軽く押す。

「―ゃ…ゃ、やめてぇ、する…する…ここでするから…。」

葉子は絞り出すような声でそう言った。
顔一面にプツプツと噴き出した汗の玉のひとつが、つっと、こめかみから頬へと流れた。


30.

「…おもしれぇ見世物だな、にぃちゃん。」

浮浪者の一人が、メガネの少年に下品な口調で言った。

「ふふ…これから、もっと面白くなるよ。」

メガネの少年は視線を葉子に向けたまま、その浮浪者に答える。
葉子は、左手首と右足首に手錠をされているため、
前屈の姿勢で便器を跨いで中腰の姿勢になった。

「ツヨシ君、手錠、外してあげなよ。」

メガネの少年がニコニコと微笑みながら金髪の少年に声をかける。

「よぉ、ありがたく思えよ!手錠を外してやるってよ!
 手錠の鍵、どこだ!教えろ!コラ!」

金髪は葉子のショートカットの髪を掴んで、彼女の首を揺さぶりながら、
激しい口調で彼女に言った。

「…ポケット、ポケットの中。笛の所に…。」
「あぁ?笛ぇ?…その笛はどこにあるんだよ!」
「ひっ、ぃ、痛いっ…ひも、肩紐の、先に…右胸のポケット…の中…」

それを聞いた金髪は、乱暴に肩から下がった白い紐を引く。
シャツの胸ポケットから引き出された笛の部分に、小さな鎖で手錠の鍵が繋げられていた。

カチリ。
―葉子の左手の手錠が外された。

「さぁ、これで不自由なく用が足せるでしょう。」

メガネの少年の声が相変わらず穏やかに響いた。


31.

手錠をはずされても葉子は、ためらうように、そして我を忘れたかのように、
中腰の姿勢のまま動けずにいた。
そんな彼女に業を煮やしたのか、金髪が葉子の後頭部を大きな掌で掴んだ。

「あぁー、どしたぁ?えぇ、オイ!」

金髪の腕に少しづつ力が加わり、葉子の額が目の前の壁に、ゆっくりと押し付けられた。
そして、葉子の頭を、壁のタイルに繰り返し打ちつけながら、苛立った口調で彼女を責めはじめた。

「コラ!」―ゴッツ!
「糞の・しかたを…」―ゴッ・ゴッツ!
「わ・す・れ」―ゴッ・ゴッ・ゴッツ!
「た・の・かぁ?」―ゴッ・ゴッ・ゴッ・ゴッツ!

「このアマッ!」―ガツン!
「ヒッ!」

最後の一撃には、これまで以上に力が込められていた。
金髪は、葉子の額をタイルに強く押し付けたまま腕に力を加えはじめた。

「―それとも立ったまま、糞漏らす方を選ぶのかぁ?
 それも面白れぇんだけどな。」
「う・うっうっうっ…」

葉子の喉から嗚咽がもれ始めた。
汗にまみれた頬の上を涙が流れる。

額の痛みのせいか、先程まで切迫していた便意は軽くなっていた。

「ツヨシ君、放っておけよ。そのうち、嫌でも自分からやるさ。」

メガネの少年が言った。

「―なにしろ、ピストルには、弾が一発、残ってるんだからね…。」

その言葉を聞いた金髪の腕の力が緩んだ。
拳銃の最後の弾丸が自分に向けられてもいい、と葉子は考えていた。
―ここで、このまま恥を晒す前に死んでしまってもいい…と。

だが、メガネの少年は言った。

「ここの住宅地には、子供が多いよね。―幼稚園の子とか、可愛いらしいよね。」


32.

その言葉を聞いて、葉子の顔から血の気が引いた。
彼女は慌てて、メガネの少年の方を見た。

「―あ、あなた、今、なんて…?」

彼は、ニコニコとした笑顔を崩さずに、メガネの奥の人なつっこい瞳で葉子を見ていた。

「ふふ。生意気ざかりの子供は可愛いって言ったんだよ。
 ただ、あまりに生意気だと、憎く思えてくる時が、あるね。」

メガネの奥の瞳が冷たくなった。

「…殺したいくらいに、さ。」

葉子は眼を大きく見開いて少年を見つづけていた。

「さぁ、婦警さん、お腹、大丈夫?―そろそろ、我慢も限界じゃないかなぁ…」

ここで排便するしかない、と葉子は思った。
激しい便意が治まっていた事が、逆に葉子には恨めしかった。

葉子は静かに指先を、乱れたスカートの裾にかけ、ゆっくりと腰まで捲り上げていった。
ストッキングに包まれた白い太腿が露わになる。

「―何度か、扉の下の隙間から覗いた事はあったが、こうやってハッキリと見るのは初めてだなぁ。」

浮浪者の一人が言った。

「しかも、婦人警官がなぁ…」

葉子は、その声を聞こえないように努めながら、
ストッキングと下着に手をかけて、膝まで引きおろした。
十の瞳が葉子を凝視している。

彼女はスカートの裾が落ちないように両手で持ち、
恥辱に耐えるように、眼をギュッと閉じ、歯を食いしばって、
ゆっくりと白い和式便器の上にしゃがみ込んだ。


  -つづく-

 

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